ストーカー2:ハート・オブ・ チョルノービリが発売されました
本作の最初の発売予定日は2012年だったらしいのですが、
- アンリアルエンジン4への対応
- レイオフ
- クラファン炎上
- ウクライナ危機
などを理由に遅れに遅れ、実際に発売されたのは2024年11月21日と実に12年にも及ぶ延期を重ねています。
「来年発売」と言われて、興味がわいて初代S.T.A.L.K.E.R.をやったのはもう4年前のことです。
厳しい国際情勢のことも考えれば「発売されただけでもありがたい」ともいえる本作。しかしsteamなどのレビューでは「バグまみれ」「未完成品」という批判的なレビューが多数見受けられます。
どのような問題を抱えているのか? それでも好評を入れる人の理由とは?
実際に遊んで確かめていきましょう
本レビューにはネタバレが含まれます
基本情報
タイトル | S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl |
メタスコア | 73(PC) |
steamのレビュー | 非常に好評 |
開発元 | GSC Game World |
パブリッシャー | GSC Game World (worldwide), SEGA (Japan) |
対応ハード プラットフォーム | Xbox Series X/S, Project xCloud, Microsoft Windows |
steam評価が全体だと非常に好評だけど、日本人だけ賛否両論になっているのが気になります。
総合評価:
UI | |
シナリオ | |
世界観 | |
キャラクター | |
グラフィック | |
音楽 | |
熱中度 |
約60時間でクリアしましたのでレビューします。ちなみに過去作プレイ履歴は、シャドゥオブチョルノービリを「ゾーンを消してくれ」エンドでクリア(バッドエンドの一つ)、クリアースカイは途中で挫折、という状況です。
では特徴から見ていきましょう!
特徴
アノーマリー
アノーーマリーとは
ゾーンで発生する危険な超常現象。人やミュータントをミンチしてしまう竜巻や、浮遊する電撃玉、毒ガス、酸の沼など様々な種類がある。多くのアノーマリーは接近すると主人公の持っているセンサーが警報音を発する。音を頼りに回避しよう。
ボルト
主人公はボルトを無制限に投げることができる。どこから出したし。アノーマリーはボルトにも反応するため、位置を特定し避けるのに役立つ。一部のアノーマリーはボルトに反応すると一時的に消滅する。インターバルの間に安全に通行することも可能。
アーティファクト
アーティファクトとは
ゾーン内のアノーマリー付近で生成される不思議な物質。人間の肉体に影響を与える性質を持っており、装備すると体力の回復や耐性の強化など、様々な効果を発揮する。
検出器
検出器を装備することで、アーティファクトを捜索できる。
最初に手に入る検出器は低品質なもので、近くにアーティファクトが存在するほど短い周期で発光&音を出すというもの。
冒険を進めていくと、より高精度な検出器を入手できる。
効果
アーティファクトを装備すると、出血や物理などのダメージ耐性、所持重量の増加など有用な効果を得られる
ただし、多くのアーティファクトは装備することで放射線ダメージを受けてしまう。放射線ダメージ耐性を持ったアーティファクトと同時に装備するのが望ましい。
武器
修理
武器は使うと「耐久力」が下がっていく
耐久力が低下した銃は、突然発砲できなくなる「ジャム」を起こす場合がある
耐久力は修理屋で修理を受けることで回復可能
アップグレード
修理屋では銃やアーマーのアップグレードも可能。重量を軽減させたり、反動抑制、射程の強化を行える。
弾薬
それぞれの武器には決められた弾薬がある。種類はかなりのものがあり、同じ口径でも徹甲弾など複数の種類がある
重量
本作ではアイテムごとに重量が決められている。回復やクエストアイテムにも重量があるため、シビアな重量管理が求められる。
お金
クーポンと呼ばれる電子マネーがゾーンでは通貨として使われる。クエスト報酬や戦利品・アーティファクトの売却でクーポンを稼ぐことができる。
ちなみに、前作ではロシアンルーブルが通貨だった
光放射線
ゾーンでは、ランダムなタイミングで「光放射線」が発生することがある。光放射線が発生すると、空が赤くなり、雷が多発するようになる。
この状況では屋外にいると持続的に大ダメージを受け、そのままでは死亡が確定する。シェルターになる建物を発見して避難する必要がある。
評価点
殺伐としつつも、どこかノリが軽く受け入れやすいストーリー
クエストの関係者も一癖あるやつが多い。
仲間をバンディットから助けてほしいという依頼を解決。しかし話を聞いてみると、依頼人がバンディットに借金をしたことで、仲間が代わりに捕まったといういきさつだった。
酒屋の店主から借金を取り立ててほしいという依頼を受ける。債務者は店主のほかにもバンディットにも借金をしており、店主には金を払うからバンディットを殺してほしいと頼まれる。
その場しのぎで破天荒なストーカー達の生き方は、まるで闇バイトのようでもある。その姿はプレイヤーにも知らず知らず影響を与え、没入感を高めてくれる。
主人公スキフの目的も、「失った家を取り戻す」というはっきりしたものがあり、感情移入しやすい。どこか粗暴な性格も、殺人や派閥抗争の銃撃戦がまかり通るゾーンの世界観にピッタリである。
中盤以降、話がふわっとして何のために戦ってるのかよくわからないシーンはあるが、盛り上がるところはちゃんと盛り上がる。
ストーカーシリーズ独特の雰囲気
音楽
耳触りの良いSE。クエスト更新音やタブレットのボタン音は聞いていて心地よく、工夫されていると感じた。アノーマリー警報音やアーティファクト検知音も、実際にそういう機器がありそうなリアリティのある音になっている。
焚火の周りに集まったストーカーたちが、ギターで音楽を奏でるといった、何気ない一瞬が印象に残る演出はさすがである。
ただし戦闘中やフィールド上では音楽は鳴らない。
グラフィック
グラフィックも荒廃して色あせたゾーン独特の雰囲気をうまく演出している。ゴミや瓦礫などの小物が室内の薄汚れた生活感を醸し出している。
ミュータントの醜悪な見た目も、ホラーチックな雰囲気とマッチした両デザイン。
ストーカーシリーズでしか見せられない景色を、現代的なグラフィックで出せたというだけでも一定の価値がある。
シビアなサバイバル体験
銃や弾薬はおろか回復、果てはクエストアイテムにさえ重量がある。回復や弾薬を考えなしに大量に持って行こうとすると、戦利品を持って帰れなくなるといった弊害がある。
そのため「クエストに対処できるギリギリの物資だけを持っていき、一括千金を狙う」「戦利品はある程度諦めて、大量の物資を持っていく」というプレイの選択肢が生まれる。
「弾薬はこのくらい、回復はこのくらい持っていけば何とかなるはず」という経験に基づく勘が培われやすいのも、サバイバルゲームとして面白いところ。
オープンワールド系のゲームでありがちな、中盤以降物資が余ってヌルゲー化、戦闘に作業感が出てくるということが少ない。
気になった点
理不尽に難易度が高い
物資のやりくりや過酷なゾーンの環境が目玉の作品ではあるが、それにしても難易度は高い。
最初に出会う豚のミュータントは、初期装備ハンドガンをワンマガジン撃ち込んでも倒せないくらい固い。
人間も硬い。ヘッドショット1発で倒せるのは序盤だけ、中盤以降は状況によってはヘッドショットを3発耐えてくることもある。こうなるとスナイパーライフル系のヘッドショットダメージが高い武器を装備するのがいいだろう。
ちなみにこれでも過去作よりは緩和されている。
過去作では、「狙ったところに弾が飛ばない銃」「気づいたら足元にグレネードがあって爆死」など、今以上に難易度が高かった。
よく考えてみると、リアリティや設定よりも実プレイの理不尽さを優先したかのような要素も多い。
ミュータントの攻撃が届かない高台まで移動すると、相手が射線を切るように物陰に隠れる、高台から降りるとすぐに察知して襲い掛かってくる、などと銃の仕組みを理解してるんじゃないかという挙動を見せる。しかも設定上盲目のはずのミュータント犬でもこのような挙動を見せる。
念力を使うミュータント「ポルターガイスト」にダンボールを投げつけられただけで、HPが全快から5割持っていかれる。
クエストアイテムの重量設定もかなり厳しい。
持てる総重量はデフォで80kg。これを超えると歩けなくなる。必要な装備や物資を持つと45kgほどが占有される状況で、12kgのスキャナーや合計9kgの爆弾を持たされる。売却用の戦利品の枠がどんどんなくなっていく。
過去作プレイヤーにとってはこれぞ故郷といった感じだろうが、初見の人は覚悟してプレイしたほうがいい。
ちなみにクエストアイテムの重量は、アプデで改善されたらしい。
資源を浪費するだけのミュータント戦
ミュータント戦は倒してもアイテムを落とさず、こちらが弾薬や回復などの資源をただ浪費するだけである。ミュータントの出現はランダムポップと固定の場所への出現の両方があるようだ。
逃げることも可能であるが、種類によっては何百メートルも追いかけてくる。重量ペナルティの状況によっては逃げるのが困難になる場合も多い。
限りなく分身を生み出すミュータント「サイドッグ」が特に厄介。少し目を離した隙に15体程の分身を生み出す。分身は一発当てるだけで消滅するが、本体はピストルワンマガジン以上の硬さがある。
本体を見つけ出して倒さないと、瞬く間に分身を補充されてジリ貧になってしまうが、分身と本体で見た目が同じなため、見つけたやつから撃っていくしかない。
この性質が、「重量のせいで持ち歩ける弾の数に制限がある」という本作の仕様と相性が悪く、倒すまでに貴重な弾を多く消費してしまう。
お金が足りない
武器・アーマーの修理・アップグレード費用が非常に高額。クエスト報酬が数千クーポンの世界で、武器の修理は1万数千、アーマーの修理では3万以上持っていかれる。
高額な修理費に対する対策としては、「敵が落とした武器を使い捨てで使う。そもそも修理をしない」「戦利品を厳選しつつ大量に回収し、効率よく利益を上げる」のどちらかになるだろう。
個人的には使い慣れた武器を修理しながら使ってたが、効率的ではなかったかも
アップグレードは費用に見合った効果があるとは言い難いものもある。軽量化やアーティファクト枠の増加は大事だが、反動減少や弾速向上は効果を実感しづらい。少なくとも、威力を上げたいならアサルトライフルのアップグレードをするよりショットガンやスナイパーライフルを装備したほうが安上がり。というか威力を上げるアップグレードはない。
戦利品を多く回収するということは、重量ペナルティによる不便さやミュータントから逃げられなくなるなど気が進まなくなる要素も多い。
最大レベルの重量ペナルティは「強制徒歩」、そんな状態ではるか遠い店までヒーヒー言いながら戦利品を運んで稼いだ金が、毎度の修理で湯水のように消費され溶けていく。アーティファクトの枠も重量増加と放射線耐性ですべて持っていかれ、戦闘で有利な効果を装備する余力なんてない。
ゾーンの商人どもはホントに足元見てやがります
アプデでクエストの報酬が2~3倍になり、修理費が減少、アップグレードされた武器の販売価格が修正、アーティファクトの売却価格が向上したようです。
敵と味方が分かりにくい
味方を間違って殺してしまうと、その場で敵対し攻撃されてしまう。誤射は許されない。味方と敵の派閥を知って、装備の特徴を覚えなければならない。
メインクエストに大きく関わる派閥で例示すると
- モノリサー:白黒迷彩の服の上に黄緑のアーマーを着ている
- ウォード:グレーの服の上に薄緑のアーマー。小奇麗な質感。一部がオレンジ色をしている
- スパーク:黒地に水色の迷彩柄
これが敵味方入り乱れる乱戦中だと非常に分かりにくく、味方に誤射して裏切り者認定され、撃たれてしまう事態が頻発する。夜や地下施設など暗い場所が多いというのも大きい。
デューティ派閥などは、本筋にあまり絡まず過去作プレイヤーへのファンサのために顔出ししている程度である。派閥の数が多く、初見プレイヤーにとってどこが重要なのかわかりにくいかもしれない。
リアリティのある戦闘描写であるのは確か。刺さる人には刺さりそうだし、個人的にも好きな要素ではある。が、実プレイ中だといつの間にか裏切り者になっていて困惑してしまう事態も多発する。
ちなみに画面上部のコンパス上に敵の位置を示してくれる仕様があるため、完全に目視による識別だけが頼りというわけではない。まあコンパスはコンパスで距離感がわからなくて頼りづらいのではあるが…
私はクリア寸前まで、派閥によって見た目が違うことにまで意識がいかず、ずっとコンパスを頼りに敵味方を識別していました…
不満点
ミュータントやアノーマリーより遥かに恐ろしいバグ
尋常ではない量のバグに遭遇する。
起こっても特に困らないバグや奇妙で笑えるバグもあるが、中には快適なプレイやクエストの進行に影響する深刻なものも。
遭遇したバグ一覧
- 無線通信音声のノイズエフェクトが一部消える
- 死体の足元に謎の生首が表示される
- ベッドに寝ている人物の体が浮き上がる
- ミュータントが空中にスタックして微動だにしなくなる
- HUDが一切表示されなくなる
- 突然インベントリに大量の銃が追加される
- 回復アイテムを使用し、アニメーションが表示されても、実際には回復しない
- クエスト目標を達成していないのに、達成したことになる
- メインクエストの目標マーカーが表示されない
- メインクエストのオプション目標の人物がいる建物の、扉がロックされ入れなくなる。そのオプションは達成できなくなる
- 会話選択肢が無限ループに陥る。会話から離脱することもできなくなり、詰む(ゲームを再起動したら治った)
メインクエストのとあるイベントで死亡後、データをロードすると一切の移動ができなくなり、詰む(ゲームを再起動したら治った) - 最初の村がいつの間にか壊滅
店、修理屋、医者などが利用できなくなる
CTDも数回発生しました
開発陣の精力的なアップデートにより、バグは順次修正されていっているようです。今後修正されていくバグを供養するために、画像をアップしておきます。
運ゲーになりがちな光放射線
場所によっては近くにシェルターがない(見つけられない)場合もある。その場合詰みが確定する。光放射線の発生はランダムのため、数分前のセーブデータからやり直せば、再出現はしないと思われる。
シェルターの判定もわかりにくい。
「ドアを閉められる密閉された建物であることが多い」という情報があるが、室内にいてもダメージを受けることがある。
クエストの進行によって店が使えなくなる
特定の派閥と敵対したり、町のリーダーを殺害する展開になると、その町の店が使えなくなる。
特定の派閥との敵対や町の壊滅は、メインクエストを進めるうえで避けては通れない。ストーリーを進めるほど、自動的に使える店が少なくなっていくということである。もちろんストーリーが進行すれば、新たな町で新たな商人に出会う展開もあるため、一方的に不便になっていくわけではないということは明記しておく。
メインクエ3割くらい進んだ時点での店不足が一番深刻だった
派閥同士の関係やその派閥の成り立ちをしっかり理解していないと、先の展開が予測しにくい場合も多い。意気揚々と戦利品を持って帰ったら町が無人になっていたという悲劇が起こることも。
もともとファストトラベルがかなり限定されているゲームで、移動は時間をかけての徒歩移動がデフォとなる。ゲームを進めるほど使える店が少なくなる、というのはかなり不便。
味方になった派閥が敵の町を占領して新たに店を構える、とかはできなかったのだろうか。町の指導者を暗殺するクエストについては、残された全部の町の面倒を見てやれよと依頼人に言ってやりたい。
裏切っても店を使わせてくれるシドロヴィッチおじさんは聖人です
字幕が読みにくい
字幕のフォントが細く、縁取りも細いため読みにくい。設定で字幕を大きくすることができるが、それでも十分ではない。草むらなどではカモフラージュ効果のように背景に溶け込み、非常に読みづらくなる。
機能していないA-LIFEシステム
A-LIFEとは?
S.T.A.L.K.E.R.シリーズ独自のシステムで、ざっくりいうと、人々やミュータントなどがプレイヤーと関係なく生活や勢力争いをする、といったところだろうか。
戦闘と戦利品運搬に夢中で全然意識してなかったよ
A-LIFEはシリーズ最大の特徴の一つとみなされている。しかしこれが不完全らしく、steamレビューでは未完成または未実装と言われている。シリーズのコアなファンからは批判があるようだ。
まとめ
終わってみれば、ゾーンでの生活も悪くなかった。
プレイ中何度「クソゲー」と言ったかわかりません。でも、終わってみれば本作にしかない面白さを持っている良作だったと思います。本作の別ルートや未クリアの過去作もやってみたくなりました。
ただ、人に勧められるかというと、うーん…今はだめだ! バグ多すぎです。
難易度が高いことが売りのゲームが評価されるには、ち密なつくり込みが不可欠です。難易度が高いということは、理不尽になんども殺されるということで。プレイヤーはその分イライラや嫌な思いをため込むことになります。
「ゲームが悪いのではなく、あなたのミスのせいで負けたんですよ」と高難易度ゲームは無言で語りかけてくる。それに納得させてくれるだけの作りこみがないと「いや! 悪いのはゲームだろ!」となってしまうのは必然です。
ラストでは「回復がバグで発動しないことがあるのなら、回復を2回使えるだけの余裕を常に確保して撃ち合えばいい」と達観しながらやっていました。だがその境地に至る前に、何度頭に血が上って発狂しそうになったかわからない。
今買うのは愚策です。1年くらい待ってちゃんと完成してから買いましょう。
最後まで読んでくれてありがとう! 次はインフィニティニキをレビューする予定です。
以下、エンディングのネタバレあり
エンディングはウォードルートでした。どうやら全部で4つのルートがあるらしい。過去作主人公を二人も殺すという気合の入りすぎた展開に、思わずラスト4時間はぶっ続けでクリアまでいってしまいました。
2作目「クリアースカイ」の主人公スカーが、かなり発狂してたのがなぜなのか気になりました。あんな奴じゃなかったはずだけど。クリアースカイは難しすぎて挫折しちゃったんだよなぁ。多分難易度が高すぎて発狂したんだと思います。
まだウラがありそうなエンディングでしたが、とにかくスキフが新しい家を買ってもらえて、私もうれしい。
ウォードの背後にいるサーカーの目的が、正直よくわからなかった。
最後の映像も気になります。スキフの視界が白黒モニターを通した映像に切り替わり、大量のモニターが並んだ空間が映し出されました。
スキフも「エージェント」という操り人形のような存在の一人だったのでしょうか?
そんなことより家だよ家。暖けぇ家に住めることが大事なんだよ!
改めて、最後まで読んでくれてありがとう!
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