はじめに

皆さん、ステルスゲームは遊んでいますか?
敵の監視をかいくぐり、装備を駆使して誰にも見つからずに任務を達成する。ステルスゲームはうまく遊べれば、大きな爽快感を得られるジャンルでもあります。
しかし、難易度が高くなることが多いジャンルでもあり、最近は、ステルス要素のみで売りだすゲームが少なくなってきたように感じます。
今回は、多彩なプレイスタイルが楽しめると好評のステルスゲーム、「ヒットマン」を遊んでみましたのでレビューしていこうと思います。
どれを買えばいいの?
レビューには少しネタバレを含むので、その前にエディションごとの違いについて説明しておく。
これはsteam販売ページにある表で、どのエディションにどんなコンテンツが含まれているかを示している。が、正直買う前にこれを出されてもなかなかわかりにくい。
ひとつずつ説明すると、
- FREE STARTER PACK:シーズンごとの無料ミッションとチュートリアル
- EPISODE: SAPIENZA:FREE STARTER PACKの内容に加え、HITMAN1のサピエンザのステージ
- PART ONE:HITMAN1の全ステージ
- STANDARD EDITION:HITMAN1~3の全ステージ
- DELUXE EDITION:HITMAN1~3の全ステージ + 追加衣装、追加ミッションなどのDLC
FREE STARTER PACKとEPISODE: SAPIENZAは実質体験版のようなものとなっている。
1だけやりたい人はPART ONE、1~3まで遊びたい人はSTANDARDかDELUXEを買うのがいいだろう。
本レビューはネタバレを含みます
基本情報
タイトル | HITMAN World of Assassination |
メタスコア | 84(PS4版HITMAN1) |
steamのレビュー | 非常に好評 |
開発元 | IO Interactive A/S |
パブリッシャー | IO Interactive A/S |
対応ハード プラットフォーム | PlayStation 5、Nintendo Switch、 PlayStation 4、Xbox Series X/S、Microsoft Windows、Xbox One |
総合評価:
UI | |
シナリオ | |
世界観 | |
キャラクター | |
グラフィック | |
音楽 | |
熱中度 |
要素
変装
本作の肝となる要素。モブから奪った服を着ることで、主人公が本来は入れない場所にも侵入できる。
服装には警備員や兵士などお決まりのもののほか、バーテンダー、ホテルマン、メイクアップアーティストなど様々な種類がある。また、モブではないユニーク人物から服を奪うと、探偵やモデルなど一風変わった職業に変装することができる。
隠し場所
気絶や殺害した被害者が発見されると、マップが警戒状態になり犯人に対する捜索が始まる。さらにその人物から奪った服を着ていると変装がばれてしまう。
警戒状態になるのを防ぐには、被害者をクローゼットやゴミ箱の中に隠すのが効果的。誰かに発見されなければ、気絶させた被害者が自力で目覚めることはない。
特定のエリアに侵入するにはボディチェックを受ける必要がある。ボディチェック中に銃など違法なアイテムが見つかると一気に警戒状態になるため、ごみ箱などに銃を隠すことも重要なテクニック。
インスティンクト
インスティンクトを発動すると、壁の向こうの人間を透視することができる。さらに標的を赤色で強調し、利用できるアイテムも強調表示できる。
責任者
変装した主人公は本来は入れないエリアにも侵入できるが、そのエリアの責任者には見破られ、追及されてしまう。
責任者など、見つかると警戒状態になる人物は、インスティンクト画面で頭上に〇が表示される。
武器
武器にもさまざまな種類がある。
初期装備はサプレッサー付きピストルだが、下手に撃つとこちらの位置もバレてしまう。
小型爆弾、棍棒、ピアノ線ワイヤーなど暗殺者らしい武器がそろっている。
スナイパーライフルなど大型の銃も存在するが、持ったままゲームを開始することはできず、マップ中に点在する隠し場所まで取りに行く必要があるうえ、スーツケースから取り出したところを見られると一発で大騒ぎになってしまう。
毒
毒にも複数の種類が存在し吐き気を催してトイレに向かわせる催吐毒、瞬時に息の根を止める致死毒などがある。
評価点
作りこまれたミッションストーリー
本作にはミッションストーリーという、ミッションを進めるうえでの筋書きが用意されている。一人の標的を始末するうえで、複数のミッションストーリーが用意されているうえ、それぞれのストーリーが作りこまれておりどこかダークなユーモアを感じさせて引き込まれる。
例
- 取材のインタビュアーのカメラに爆弾を仕込む
- 虐待的な母親の幽霊が出たと思い込ませて標的を誘導する
- 恋仲のゴルフコーチに変装し、ムーディな雰囲気の中座って待つ
- 標的が過去に犯した殺人の証拠音声を大音量で流して部屋に誘い込む
- 拘束された囚人に変装し、意気揚々と長話をしている標的の前で、不意に立ち上がって始末する
進め方によって千差万別の物語になる。標的の人間的な面を様々な視点から見ることができるのもあって、周回プレイのいいモチベーションになる。
恋人に変装して呼び出した後にいい雰囲気の中毒入りのワインを飲ませ、トイレでゲロを吐いている最中に背後から襲い掛かり、自分の吐しゃ物の中で溺死させるという、鬼畜の所業を行うことも可能。(チャレンジの内容からして明らかにこの流れに誘導されている)
相手も生物兵器を作っていた悪い科学者ではあるのだが…。
実はかなり個性的な主人公「エージェント47」
パット見はスキンヘッドと後頭部のバーコード以外あまり特徴はない。セリフも任務に関係することばかりで多くはしゃべらず、表情もめったに変わらない。
謎に多芸でどんな職業に変装してもそつなくこなすため、暗殺以外何でもできる男などとネット上で話題になっている。”暗殺以外”なのは後述の難易度が高いせいだろう。
- 板前として寿司を握る(フグ入りの毒寿司)
- バーテンダーとしてカクテルを作る
- モデルに変装してランウェイを歩く
- 探偵に変装して標的に近づく、会う要件もよく知らないはずなのにそれっぽいことを言って話を合わせる
- 凄腕マッサージ師に変装し標的から好評を得る(当然直後にあの世行きとなる)
見やすく、スタイリッシュなUIデザイン
本作のメニュー画面は白、黒、グレーを基調としたデザインで、赤のワンポイントが入っているという、目に優しくかっこいいものとなっている。
NPCのにつくアイコンも「!」「?」や吹き出しマーク、責任者の頭上の〇など極限までシンプルである。なおかつどんな状態なのか一目でわかるようになっており、洗練されていると感じた。
気になった点
セーブ&ロード必須の難易度
本作は戦闘メインのゲームではないため、戦闘はこちらがかなり不利なバランスとなっている。2,3人に囲まれただけで簡単に負けてしまう。
変装するには欲しい服を着た誰かを気絶させる必要があり(ミッション中に服だけ手に入る場面もあるにはある)、人の首を絞めている現場を見られると言い訳も立たず警戒状態になる。責任者に不意に出くわして見つかってしまう場面も多い。逃げれば何とかなることも多いが、逃げた先で別の責任者に見つかってしまうと…。
また、一度発見されてしまうと敵兵が物凄い量湧いてきてとてもじゃないが対処できない。
標的が危険を感じるとシェルターに逃げてしまい、一部のミッションストーリーの達成が不可能になる場合もある。
本作は何か行動をとる前に逐一セーブし、不測の事態が発生したらすぐにロードしなおして、条件を変えてまた試すという繰り返しに多くの時間を割くことになる。
このセーブ&ロードの多用は、本作だけの問題ではなく「ステルスゲーム」というジャンル全体の敷居を高める要素といえる。本作や「Dishonored」シリースなどのステルスゲームは、「敵に一度も発見されない」「(なるべく)殺さずにクリアする」など難しい挑戦を目標に作られている。
非ターゲットの殺害にはスコア上の重いペナルティがある。ある程度は完ぺきを求めたプレイングを想定しているのであろう。
裏を返せば、マップ上のアイテムや敵の配置が頭に入ってくるほど、サクサクと警備をかいくぐり、標的だけを始末する鮮やかなプレイが可能なのだが…一週目はどうしても無知ゆえに雑なプレイングになってしまうことが多い。
待つことが多い
こちらもステルスゲームというジャンルと結びついた要素なのだが、待ち時間が意外と多い。標的が攻撃範囲に移動するのを待つ、衣装を落とすモブが一人になるまで待つなど。

個人的に待つのは苦手なところがある。
思い返してみると、ロード時間などシステム的に必要な場面を除いて、ゲーム中に待つ時間が長いゲームジャンルってあまりないんじゃないか…。
最近ステルスゲームの大作が出ないのは、前述のセーブ&ロード必須で初見が苦しくなるデザインと、この待つ時間が多くてじれったいという、ジャンルの根っこの部分と結びついた難しさがあるせいだと思うのだが、いかがでしょう?
主人公を疑わない警備員
ゲームバランスとしてはいい出来で文句はないのだが、リアルに考えるとどうしても突っ込みたくなってしまう。
鋭い目つきのスキンヘッドで、後頭部にバーコードが入っているという、明らかに特徴的な見た目だが、一般の警備員や職員は主人公を怪しむこともなく業務を続ける。
一度通行を拒否されたり、不法侵入をとがめられても、適した服を着て再度挑戦すると普通に通してくれる。
リアルに考えると違和感があるが、本作プレイヤーの間ではある種のシュールギャグのような認識がされており、本作特有の雰囲気を作り出している。
尻切れトンボなストーリー展開
本作の中盤で、エージェント47が過去に遂行してきたミッションに「プロヴィデンス」という謎の組織が関与していることが明らかになる。
しかしプロヴィデンスとは今作中で決着がつかず、対決は続編に持ち越しとなっている。
47と過去に関わったことを匂わせるキャラクターも登場するのだが…その真相はわからずじまい。
ラスボスとなる標的はチュートリアルで困難な課題を出して、47を落とそうとした上層部である。味方を裏切ってプロヴィデンスに組した彼を暗殺するということで、ある種意趣返しのような展開になっている。そのためストーリーの見方によっては、単品で完結しているともとれる。
が、こいつ自体最初と最後のミッションでしか出てこない(しかも最初のミッションはカットシーンのみ)ので、印象が薄いと言わざるを得ない。
ただし現在ヒットマン(リブート)からHITMAN3までが「HITMAN World of Assassination」として一本の作品になっている。スタンダードエディションを買えば完結まで追加出費なしで完結まで遊ぶことができる。どれを買えばいいのか初見では少しわかりにくいのであるが、それは最初に述べたとおり。
セール時なら3000円程度で買えるので、ずいぶんお得になったものである。
終盤のマップ「北海道」
欧米人が考えるちょっとズレた日本を舞台としたステージであり、日本人から見ると結構ツッコミどころがある。
- 舞台となる施設は病院。日本政府の認可を受けていない治療を極秘裏に行っており、世界中のVIPが集まってくる
- 山の頂上に病院が居を構えており、壮大な景色が一望できる。北海道にこんなデカい山あったっけ
- 病院内にレストランが備えられ、刺身が提供されている。さらに資格を持っていない板前が最近フグを提供し、死亡事故を起こした
- 露天風呂がある。しかも混浴。さらにタオルを巻いたまま入る。おまけに周囲には雪が積もるほど寒い
- 立ち入り禁止区画の扉には、インターフェイスに大きく「いいえ!!!」と表示される。そんな言い方普通しない。しかも「!」を三つもつける必要ないだろ!
個人的にこういうなんちゃってJAPANは結構好き。奇妙な点を探しながら歩くのが面白い。
不満点
クイックセーブがない
前述したとおり、本作はセーブ&ロードを多用するデザインになっているため、せっかくPCで出すならクイックセーブは欲しかった。毎度毎度メニューを開いてセーブやロードをするのは面倒だった。
「セーブすべきか…? めんどくさいからいっか」と思った直後に変装がばれて絶望することも。
どれを買うと何のコンテンツがついてくるのか分かりにくい
詳しくは最初に述べたが、何も知らない初見の人が本作を買おうとしても、どれを買えばいいのか少し混乱するところがある。
余談だが、本作はもともとHITMAN3として単品で発売されていた。そこに1と2が無料DLCとして追加された後、タイトルが変更され「HITMAN World of Assassination」となったという過去がある。
そのため最初に3だけ買っていた人にとってはかなりお得なセットなのだが…今から始める人にはわかりづらくなっている。
まとめ

本作にしかない魅力を持ったいいゲームだった。
ミッションストーリーコンプと達成しやすそうなチャレンジを狙って2週目を進行中です。
2、3の範囲はまだ手を付けていないので、いずれまた記事を書くと思います。(今年は興味あるゲームがたくさん発売されるから、いつになるかわかりませんが)

最後まで読んでくれてありがとう!
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